第14章 リアル非充実(2)
ピエールがどんぶりを抱えて「お待たせ」とやってくる。ピーマンと玉ねぎとなんとか肉の炒め物だったはずのそれは茶色いカレーのようなものになっていて、厨房を振り返ればサッチは親指を立ててウィンクしてきた。
「あんらうまそっ。よかったわね」
ダリアは目をキラキラさせる。
「なんかかえってすみません……」
私はいたたまれない。ピエールは頭を掻きながら言う。
「いいから食えよ。なんとか味、整えたし」
あらっ。えっ。まさか、これってあんたからへのラブレター?
はぁ?
ダリア、無粋よ。
やだぁ、ピエールったら見かけによらずね。
ダリアはなぜか一人で照れてテーブルをバシバシ叩いている。私は余計に固まってスプーンを握りしめる。そこへサーシャもやってきた。
ちょっと! 華部屋のあんたたち、またになにかしてんじゃないでしょうね。
出たわ、メス猫。
聞こえてますけど? メス猫はそっちのキャットでしょ。
ナースさん。『また』ってあたしはになにかしたかしら?
焼酎がぶ飲みさせたじゃない。
それはダリアとリリィよ。あたしじゃないわ。
じゃ、じゃあ、俺は厨房戻るわ。
ピエール! がんばんなさぁい。は手強いわよぉ!
だからちげぇって。
サーシャはどうもあたしたち華部屋をひとくくりにするけど、それはどうなのかしら?
あんたたちだって、ナースはみんな同じだと思ってんでしょ。
それはイゾウ姐さんよ。
ちょっとキャット、イゾウ姐さんを悪く言う気?
ちがうわよ。
おい、、それ食わねぇのかよ。めっちゃいい匂いすんだけど。
エース! だめよっこれはピエールの愛の一皿なんだから。
ダリアとエースは言い合いを始め、キャットとサーシャも大変よろしくない雰囲気だ。
「華部屋で結束硬いのは結構よ。でもの体は逆立ちしたって女の子だというのをお忘れなく。聞こえてんのかしら、ね? 〝イゾウ姐さん〟」