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【ONE PIECE】 さよなら世界

第12章 それは、不死鳥 (5)


 そう言ってエースは私の頭をくしゃくしゃにする。なんなんだ。こうまで笑い者にされる不死鳥って。とたん、マルコは私の求人情報をビリビリに破き始めて紙吹雪のように空中に投げる。すっと立ち上がり一瞬私を見おろしたかと思うとさも当然のように注がれた酒を一気に飲み干し、空になった小瓶を投げ捨てる。やることが鮮やかで止める隙すらなかった。
「ふ、不死鳥さんのなのに」
 マルコは酒に強いことは知っているからこれを飲み干すくらいで驚きはしない。いやウソ。ちょっとびっくり。でも私はマルコにお酌をしたわけではないのだ。それともやはり鳥に酒をあげるのはまずかっただろうか。
「ポポロ島でしか会えないわけじゃねぇよい」
「……ほ、ほんとですか?」
「ほんとほんと。マルコが言うんだ」
 マルコは私の抱える酒瓶を取り上げて紙袋に入れるとさっさと歩き始めた。私は二人から離れないように転ばないように集中する。
「エース、灯り」
「ん」
 エースの能力を見るのは初めてじゃない。それでもまだ見慣れなくてエースの手と炎の境目を凝視してしまう。だから昨日の雨でぬかるんだ地面に足が滑る。
「わっ」
 とっさにマルコが私の腰を掴み、私が別の悲鳴を上げる前にすぐ解放してでも私の右の人差し指だけなぜか握られていた。腕や手首を掴まれるのは私のトラウマスイッチで『あの時』のことを彷彿させるから怖かったけど、これは、なんだか……あれだ……赤ちゃんがなんでも握ろうとするあれみたいだ。
「よいよい」
 マルコの手は不死鳥と同じ温度がした。
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