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【ONE PIECE】 さよなら世界

第11章 それは、不死鳥 (4)


 は歯を食いしばって顔を上げる。どうせガキならガキらしく泣きじゃくればいいのに、まっすぐの黒い瞳を静かに向ける。そういえば甲板で開口一番に「性欲処理機ですか」とオヤジに訊いたときもこんな目だった。
 もキレているのか。人間の俺と目を合わせるなんて。
「たとえば輸血はの世界にもあるだろい?」
 こくりと頷く。夜の海のように暗く深くすべて飲み込もうとする黒い瞳。
「この先が輸血を必要とするようなことが起こる可能性は、絶対ないとはいえない。逆の場合もそうだ。血液成分や血液型をちゃんと調べたら、もしものとき、おまえさんの血が誰かの役に立つかもしれない」
 は一言も零すまいとするかのように全身で聴いている。もうひと押し。
「天候次第で明日にはこの島を出る。今日も散歩に行くんだろい? なら早く済ましてこい」
 はなにか言いたげに視線を上げたがふとまた俯いて小さな声で言った。
「……お騒がせして、すみませんでした……」
 お辞儀する。どこまで律儀なんだ。いつまでそうやって他人行儀に気を遣いまくってるんだ。これならエースのときのように怒りなり恨みなり苛立ちなりなんなり発散してくれた方がずっと扱いやすい。調子が狂う。
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