• テキストサイズ

【ONE PIECE】 さよなら世界

第11章 それは、不死鳥 (4)


「ほら、今朝、の精密検査するって言ってたでしょ。『わかった』って言ってとくに変わった様子はなかったんだけど、ドクターが来たとたん青ざめて『トイレ行ってきます』って言ったきり、これよ」
 うちの船医は男ばかりだ。ナースがそばにつくとはいえ、その体に触れることになる。籠城する理由はそれか。男嫌いもここまでくると本当に厄介だ。
 朝食を食べに行く者や済ませた者、陸に上がる者や当番に就く者、とにかくこの通路は人の往来が多い。なんだなんだと取り囲む。元祖・問題児のエースがかき分けて出てきた。
「なになに、チビが立てこもってるんだって?」
 エースがトイレのドアを拳で叩く。
「おーい。開けろよ。みんな心配してるぞ。もしもーし!……倒れてんじゃねぇの? 俺、ドア壊していい?」
「だ、だいじょうぶ! 私、どこも悪くないから」
 扉一枚挟んでいるとはいえ張り上げるの声はしっかり届く。
「だから検査なんていらないよ。大丈夫。元気だから」
「あのね、そうじゃなくて……」
「わかってるよサーシャ。どのみち、私は、この世界にいちゃいけない人間だから―――」
 あぁエースの地雷を踏んだなと思ったのと、エースがドアの鍵ごと引いてぶち壊したのは同時だった。
 はなにが起こったのかわからないというように目を瞬いている。泣いた跡がある。両手を握りしめて震わせている。
「聞こえねぇよ」
 エースはキレている。俺はエースの肘を掴んだ。殴りはしないだろうが、胸倉を掴んで壁に詰め寄るくらいのことはしそうだった。当然はそんなエースに怯えている。ここで男が腕力を発揮するのは得策ではない。便器の前で固まるをサーシャが引き寄せる。
「バカね」
「そうだ。バカだ。チビのくせに。バカ、チビ、ブス!」
「エース! いい加減にしなさい」
「」
 ぴくりと肩が弾む。俺は努めてゆっくり言った。
「精密検査は、受けろよい」
/ 86ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp