第11章 それは、不死鳥 (4)
【♂】
箝口令を敷いたのはイゾウだ。に不死鳥の正体をばらすなと。イゾウはそういう遊びは徹底的にやる。早いもので宴が始まる前には周知され、十六番隊のチームワークの良さを思い知る。
宴では珍しく、いや、皆の前では初めて酒を飲んだ。なるほどオヤジの言う通り簡単にご機嫌になって、同室の奴らと大爆笑している。いいことだ。
イゾウになにかしたようで、「メス豚」呼ばわりされていたが、イゾウは本当に嫌いな奴や女一般には空気のようにしか認識しないから、わざわざ担いで運んできたことを思えば心配ないだろう。いいことだ。
アルコールが抜けてくるにつれてはだんだん硬くなり、握りしめていた俺のシャツをそっと放し、じりじりと間合いをとり、壁を打ち立てていった。記憶はあるらしい。そのせいか宴以降、の態度は誰に対してもますます他人行儀になり、ろくに水も飲まないのでサッチが怒っている。
船はまだポポロ島に停泊中だ。
は朝からせっせと掃除や皿洗いを手伝って、昼飯の片付けがひと段落したころでかけていく。丘に行くのかと問えば笑って頷く。相変わらず人間の俺とはろくに目を合わせやしないが、きっと頷くそのときは瞳の奥のほうに灯るものがあったと推測する。仕方なしに背中を見送ってから飛び立つ。
ナースやほかの隊員と一緒なら丘に降りることはしたくなかったが、はいつも一人だった。船での縮こまりようと反比例するように、よく喋りよく笑い、地球の歌を歌っていることもあり、音痴だったが楽しそうだった。これで素面なのかというくらい陽気だ。
昨日は一日、雨だった。それでも丘へ行くといってきかなかった。おやつの時間にいつも丘で不死鳥に餌をあげているから今日も期待して来るかもしれない、と頑固だ。ガキだ。
その鳥はの持ってくる餌を食べたためしがないことを俺は知っている。いくらのためとはいえ雨の中飛ぶほど俺は優しくない。しかし、時間を持て余しはじめたがそわそわと落ち着きなく窓から空ばかり気にしているのを見て、仕方なく街に連れ出した。