第10章 それは、不死鳥 (3)
「ちょっとぉ! ずるいわよぉ。あたしも変態になりたぁい!」
と言ってリリィが背中をバシッと叩くので、私はふらりとイゾウの着物の上に倒れた。
視界が紫色に染まる。イゾウ姐さんといってもやっぱり太ももは男性のものなんだよなぁなんてぼんやり思い、ふと着物に鼻を押し当てて吸い込んでみたら、遠い記憶を刺激される。ああ、おばあちゃん家の匂いだ。
「おいマルコ! このメス豚、どうにかしろ」
「メス豚!」
私はまたケラケラ笑っていたら、瞬時に天地が逆になって米俵のようにイゾウ姐さんに担がれていた。どさりと落とされる。いてっ。マルコが呆れた顔で見てくる。いや、普段からいつも呆れ顔でしたっけ。
「私、ちびまる子だって。まるちゃん」
マルコは盛大なため息をひとつして「もうおまえここにいろい」と言う。「はぁい」。
今日はマルコも紫色のシャツを着ていた。相変わらず前のボタンはしていない。慣れるなんてことはないけれど、シャツを着てくれているだけマシだと思う。ふとそのシャツをつまんで匂いを嗅いでみた。
視界が紫色に染まる。うん、マルコさんの匂いです。