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【ONE PIECE】 さよなら世界

第10章 それは、不死鳥 (3)


「呼んでみな。女の声で呼ばれたことねぇ」
 私は既に酒がまわり始めていたのでしょう。ためらいもなくするりと言えた。
「イゾウ姐さん」
「ふーん」
 え、反応、それだけ?
「……さっきとお着物が違いますね」
「宴だからな」
「この柄、すてきですねぇ」
 大きな矢絣が紫の濃淡で大胆に染め分けられていた。イゾウの向こうからダリアが身を乗りだしてくる。
「あら、ちょっと、。あんたの着てる服、それよそれ、どっかで見たことあると思ったら、マルコ隊長のじゃない」
 これが誰の服かなんてみんなよくわかるなぁ。一緒に生活しているってそういうもんだっけ。
「あらやだほんと、あんた、ちっこいマルコみたいねぇ! チビマルコね」
 リリィもだいぶできあがった顔ではしゃぐ。ってか、待て待て。いま、なんか、すごい懐かしい単語が聞こえたぞ。
「チビマルコ……ちびまる子……っぶはははっははは!」
 ちびまる子って! 私がちびまる子って! ってか、チビマルコがちびまる子って!
「あたしそんなおもしろいこと言ったかしら?」
 ああそうかぁ、このおもしろさはこの世界の人とは共有できないんだ。それでも私はなんだか楽しくておかしくて、ずいぶん久しぶりに腹の底から笑った気がした。お酒ってすごいな。いいもんだな。このときまではそう思っていた。
「マルコは自分の服着せて喜んでるし、お嬢は『チビマルコ』と言われて喜んでる。あんたら変態だな」
「変態!」
 そう言われたのがまたおかしくってゲラゲラ笑う。
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