第10章 それは、不死鳥 (3)
「んなこと、知ってどうすんだよい。忘れろ」
青い鳥を侮辱されたような気がしてむかついた。けれど正直いって意外だ。
マルコはこの船に乗っている仲間たちのことをとても大切にしている。だらしなくて行儀の悪い人たちも少なくない。それでも私が彼らを嫌いにならないように、彼らが私を邪険にしないように細かく気を遣ってくれている。それなのに、青い鳥についてはなんだかなげやりだ。ペットだから?
「わ、忘れるだなんて、マルコさんは見たことないんですか?! こんな大きくて、奇蹟みたいな青色で、一度見たら忘れられるはずないですよ。ほんとになんか泣きそうなくらいきれいで、あの鳥と会えただけで私、この世界に来てよかったって初めて思えたんだもん!」
部屋がしんとする。とたん「グララララ!」と笑いが起こる。イゾウもカラカラと腹を抱えて笑っている。だから笑いの湧きどころがわからないってば!
二人と対照的にマルコは眉間に皺を寄せて頭を掻き「くそっ」と舌打ちまでする始末。完全にご機嫌斜めだ。私は慌てて付け足した。
「……あ、あの、もちろん船長さんやマルコさんやみなさんにも大変よくしていただいて、そのこともなんというかはい、あの、感謝しているのですが―――」
聞いちゃいない船長が遮る。
「ここまで言わせてどうすんだ、マルコ」
イゾウがにやにやしながら言う。
「ポポロ島では丘の上のあたりに出やすいんだろ?」
「……幽霊みたいに言うなよい……」
マルコは両手を腰にあて、天井を仰ぎ盛大なため息をする。サッカー選手がPKを外したときのように取り返しのつかない絶望感が漂っている。いったいどうしたというんだろう。
「」
やがて肚を決めたかのように静かに名前を呼ばれる。