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【ONE PIECE】 さよなら世界

第10章 それは、不死鳥 (3)


「あー、わかります。人に慣れてる子だなと思って、さっきチョコをあげたんですけど、あっ勝手にごめんなさい、でも食べてくれなくて見向きもしませんでした」
 鳥に独り言を言いまくって口が緩んでるのか、話を聞いてなさそうなイゾウの雰囲気が楽にさせるのか、私はやけに饒舌だった。
「すぐどっか行っちゃうのかと思ったんですけど、なんかあの子ずっと海見て休んでて……」
 イゾウは終始、笑っている。そしてこの人もあの鳥のことを嫌ってるわけじゃなさそうだ。不意にまた私の顔を覗き込むようにして言った。目がキラリと輝いている。
「いいかお嬢。船に戻ったら、まずまっさきにオヤジに報告しろ」
「な、なにをですか?」
 イゾウの勢いにたじろいだ。
「バカ。青い鳥のことしかねぇだろ。オヤジに言うまでほかの奴には『見た』とか言うなよ。で、『大事な話がある』って言って、オヤジの部屋にほかの誰かがいたら人払いしてもらえ。ナースもだぞ。いいな? 返事は?」
「は、はいっ」
 もしかして私は見てはいけないものを見てしまったのだろうか。ナースにも聞かれてはいけないなんて。
「心配するな。あんたはなにも悪くない。オヤジもあの鳥を気に入っている。話が合うんじゃねぇか。それで、次。ここが大事だ。マルコに報告しろ。そのときは俺も付き合うから一人で行くなよ」
「わかりました」
「よし」


 イゾウのあとに続いて船に戻ると、甲板で談笑していたマルコが鋭い視線で私たちを見る。なぜかイゾウはふっと鼻で笑う。マルコが近づいてくる。背中に私を隠すようにしてイゾウは言う。
「ここは俺に任せて早く行きな」
 漫画の戦闘中のセリフみたいだ。マルコはもの言いたげに私を一瞥したが、のちほど伺う旨を伝えて私はそそくさと船内に入った。

 報告すると船長は「グララララ!」と地響きするような笑い声で部屋を揺らす。船ごと揺れてるんじゃないかというくらい船長は爆笑していた。イゾウといい、そんなに笑うようなことなのだろうか。青い鳥は美しいのであってコメディの要素は皆無のはずだ。
「そうかそうか。あいつがなぁ…。で、仲良く並んで腑抜けてやがったのか」
「腑抜けて…まあ、はい……」
 私はイゾウにもした質問を繰り返すが手で制される。
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