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【ONE PIECE】 さよなら世界

第9章 それは、不死鳥 (2)


 そこは小高い丘の草原。街のどこにいてもその丘は目に入るが、あえて丘の上にまで行く者はそんなにいない。見晴らしがいいのはたしかだが、それくらいしかないのだ。つまりなにもない。それでもときおり島の者がピクニックやデートでもするのか、ベンチがぽつぽつと置いてある。街側と海側と。は海側にいた。ほかには誰もいない。
 見て見ぬふりもできた。けれどもぼんやり海を眺めるのあまりの暗さに引っかかる。ナースたちとなにかあったのか。近くの低木に降り立った。ここは街からは見えやしない。新緑の葉が俺の炎に見え隠れする。
 にはまだ俺の能力の話はしていない。完全に鳥化しているいま、まさか俺だとは思いもしないだろう。
 風でも感じたかはふとこちらを見上げた。女の笑顔を『花が咲くようだ』と比喩することがあるのを知っているが、なるほどこれがそうか。さっきまでの暗さはどこへいったのやら、暗い穴のような黒い瞳の奥のほうでなにかが灯っていた。ああこれが『目が輝く』ということか。
「すごいっ! すごいね!」
 そう言って立ち上がり飛び跳ねる。五歳児か。
「大きい! どこから来たの? この島に住んでるの? ってか、きみ、なんか、え、うそ、火? 燃えてるの? マジか。すごい。本当にすごいよ。こんなきれいな鳥、初めて見た。あ、白ひげのマーク! ってことは、え、じゃあ船で飼ってるのかなぁ。こんなに大きな鳥を? 知らなかった」
 驚くのは俺もだ。こんなにはしゃぐを初めて見た。の世界では動物と話をするものなのか。すぐ去るつもりだったがもうすこし観察してみることにする。いまのこのが素であるとしたら、船でのはまるで違う。こんなに無防備に笑うのは見たことがない。どんだけ猫かぶってんだ。
「逃げないね。人馴れしてるんだ。ちょっと待っててね。待ってるんだよ。行かないでね。ステイよ、ステイ」

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