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【ONE PIECE】 さよなら世界

第9章 それは、不死鳥 (2)


「ちゃんは小食だってみんな言うけどよ、正直、俺、適量がわかんねぇんだわ。ナースよりも食わないけど、ナースたちよりも小柄だろ? 小柄なハルタはナース以上に食うし。それに世界が違うってことは体のつくりも違うんじゃね、とかさ。それでちょっと油断してたら、昨日かな、着てるマルコの服が前よりずっとでかく見えてさ、タイトな服着ないからわかんなかったけど、これヤバいなって俺は思ったわけ」
 サッチが俺の言葉を待つ。勘のいい奴だ。
「この間、うどんやっただろい。そんとき食後にがコーヒーを持ってきた。あいつもそのブラックコーヒーを飲んでた」
「おい、まさか」
「麺つゆだ」
 サッチは頭を抱える。
「かぁぁぁぁ! 喜劇と紙一重だけどな、笑えねぇわ。で、おまえはなんて言ったんだよ」
「『これは麺つゆだ』と」
「うん、驚くほどそのままだな。そんでちゃんは?」
 俺は首を振った。『いま気づきました。ごめんなさい』と泣き笑いの顔をして、ものすごいぶ厚い鉄壁を瞬時に打ち立て、味覚の狂いを隠したいようだった。
「するか。精密検査。この島で降ろしやしないならなおさら」
「あれ、ちょっと待てよマルコおまえ、うどんって結構まえのことじゃね? なに、おまえ、察しておきながらずっと黙ってたわけ? そんな大事なことを? この俺に?」
「確証はまだない……」
「でたよ。マルコの確認癖」
 サッチはソファにのけぞった。Dr.フウは鉛筆で机を叩きながら言う。
「『石橋叩いて渡る』も叩きすぎて壊れることもある」
 そんなこと言われなくてもわかっている。だが、本人は隠したがっているのだ。必死に俺たちと同じフリをしている。その気持ちがわかってしまうのは、俺も人とは違う『不死鳥』だからなのか。


 
 俺は文字通りたまには羽を伸ばしたいと思い、ポポロ島の街とは反対のほうを飛んでいた。人に見られてもべつに構わないが見せびらかすようなものではない。偵察でもない。泳ぎたいから海に入る魚人ように、飛びたいから飛ぶ。それだけだ。
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