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【ONE PIECE】 さよなら世界

第7章 華部屋(はなべや)へ (2)


 はああみえて二十代も半ばだ。てっきり十五くらいだと思っていたのだ。女の色気どころか歳のとり方も違うとは、さすが異世界からの来訪者。
 そのことはオヤジにも伝えたが、オヤジにとっては何歳だろうと奴は『ガキんちょ』なのだろう。
「このあいだから掃除や厨房やら手伝っちゃいるが、とろくて仕方ねぇ。野郎たちの三倍は丁寧だが五倍の時間はかかるよい」
 の話になるとオヤジは上機嫌だ。酒を煽る。
「なにもかも初めてなんだ。気長にみてやれ。ナースたちにも可愛がられて奴もほっとしてるだろ」
 報告を口実に来たが、ここからが本題だった。今日こそは訊きたい。
 吹雪の七日目。オヤジは確信をもって上空を探していた。そして真っ先にその不審者の服をあらためて、オヤジはさらになにかを確認していた。
「なぁ、オヤジは異世界のこと、知ってたのかよい?」
 俺は床にあぐらをかく。オヤジが徳利をよこしたので遠慮なくもらった。さすがオヤジの飲む酒は美味い。
「いいや。ただ、燃える服は前にもあった」
 話の続きを待つ俺を一瞥してオヤジは遠くを見る。
「俺がまだ実を食う前の話さ。この間のときみてぇに乗ってた船が雪の海峡に囲まれた。海賊ってのはもともとじっとしてられねぇ性分だからな。忍耐のある船長だったがさすがに荒れてた。雑用は七日交代だったからよく覚えてる。まるまる七日間。過ぎちまえばたったの七日かと思うもんだが、渦中にいると終わりなんてねぇと思えてくるからな。俺はひたすら甲板の雪かきだ。やっと止んだ、と一息ついたら、今度は雪じゃねぇでかいもんが降ってくる。人間だ。そのころの船はいまみてぇにできがよくねぇから遅くってな。そいつはあっけなく海にドボンさ。飛べる能力者もいなかったしな」
「それで、服が?」

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