• テキストサイズ

【ONE PIECE】 さよなら世界

第7章 華部屋(はなべや)へ (2)


「ああ。俺はすぐ海に飛び込んだ」
「……でもすでに服は燃えてたんだろい?」
「だが俺がじっと見物してられると思うか?」
 そうだ。オヤジはそういう男だ。
「落ちてきたそいつは酷な話だが意識があってよ。そんな気候の海だから凍るような冷たさだが、そいつは『熱い熱い』って叫んでやがった」
 の服は灰になるまで海面上で燃え続けた。火種などないのにありえないことだ。が、実際に俺もこの眼で見たのだ。熱もあった。つまり俺の幻の炎のようなものではない。燃える服を身にまとう奴の結末は言われるまでもない。
「あのな、異世界の奴の死臭ってのはすげぇぞ。肉の焼ける臭いがあんなに強烈だったのは後にも先にもあの男だけだ。船の猛者どももげえげえ吐いてた……」
 重い沈黙が流れる。なぜオヤジはに甘いのかすこしだけわかった気がした。
「……体そのものは燃えるわけじゃねぇんだろい?」
 いくらオヤジがを気に入ったのだとしても、その体が海水に反応して燃えるようでは海上での生活は危険すぎる。
「なんだ聞いてねぇのか。ナースたちが言うには、はすでに海水に切った髪やら爪やら入れてさんざん実験したらしいぞ」
 知らなかった。ときどき女部屋にいることは知っているが逐一動向を把握しているわけではない。
「マルコ」
 あらたまって名前を呼ばれる。このあとに続く言葉は決まって重要事項だと経験上知っている。
「俺はを降ろす気はねぇぞ。たとえポポロ島でもな」
 ばつが悪くて首を掻く。オヤジにはお見通しってことか。
「グララララ! あいつを華部屋に入れておきながら、おめぇ、ぶれてるな? おめぇがぶれたらあいつも他の奴らもぶれるぞ、マルコ。俺ぁ譲らねぇ。たしかにの男嫌いもまいったもんだ。あいつにとっちゃこの船が地獄なのかもしんねぇがな、けどよマルコ、この世界でいちばん『安全』なのはこの船だ。だろ?」
「ちげぇねぇよい」
/ 86ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp