第7章 華部屋(はなべや)へ (2)
大の男が三人も入ればほとんど身動きをとれないくらいのスペース。
さらにそこにビスタがのベッドを小脇に抱えてやってきた。は目を丸くしている。
「おい、マルコ。これはお嬢さんのだろう? 甲板に置いたままでは隊員たちにベンチにされるぞ。あぁお嬢さんいらっしゃいましたか。こんにちは」
「こ、こんにちは」
ビスタは軽くハットを浮かせる仕草をし、は小さくお辞儀する。
「よし、おまえらいっぺん外出ろい。ベッド入れる」
おいビスタ、あれ見ろよ。ヤバくね?
……さすが華部屋だな。
なぁ、マルコってテクニシャンなのか? ちょっとそこはっきりしたいんだけど。
それより聞けよマルコ、俺の隊のさ―――
待て待て。エースの話はあとだ。俺的に絶倫の座は譲れねぇ。
マルコはオヤジ一筋だろう。
それはそれでどうかと思うよ俺は。
えーだっていつも酒場でマルコは女メロメロにしてんじゃん。
ちょっ、エース。そういうことちゃんの前で言うなよな。
『絶倫の座』がどうのこうの言ってた奴がよく言う。
「いいかげんにしろい」
くすり、と笑みのこぼれた気配に俺を含め四人が振り返る。
「あ、ごめんなさい……」
「なに笑ってんだよい」
「い、いや、みなさん良い仲だなって。マルコさんはちょっとお母さんみたい」
俺は硬直した。サッチとエースは顔を見合わせている。
「あっ、あの、慕われてるんだなっていう、そういう意味です……」
サッチとエースはぷぷっと吹き出すと「ママ・マルコ!」「ママルコ!」と笑い転げながらどっかへ行った。きっといまごろ手当たりしだい言いふらしているに違いない。ビスタは口ひげを撫でながら嬉しそうに言う。
「いかにもいかにも。お嬢さんの言うとおり。マルコはこの船に欠かせない人ですな」
ビスタの手強さを思い知るのはこういうときだ。
「……この船で欠いてもいい奴なんざいねぇだろい」
「それもまた然り」
オヤジの部屋へ向かった。
遠征していた十六番隊が先にポポロ島へ入港したという連絡がきたのだ。報告もそこそこにオヤジが話を変える。
「で、あのガキんちょはどうだ?」