第7章 華部屋(はなべや)へ (2)
『連れ込み禁止! セックスは他所でのびのび!』
も俺もドン引きした。
「」
「はい」
「ここはきっとオヤジの部屋くらい安全だよい」
こくこくとは頷く。
中は男部屋より格段にきれいで、模様替えはすでにおおかた終わっていた。八番隊のキャットはこれから見張り当番らしい。九番隊のキャロットは島で楽しんでいるそうだ。ん? 名前、逆だったか?
「じゃあ、よろしくね。夜はキャロットも戻ってくるだろうから、華部屋の歓迎会しましょ」
そう言っての頬をひと撫でする。は石のようになったが、嫌悪すべき対象なのかどうか戸惑っている。
まぁ、見張り台に立つときのキャットは普段より念入りに女装して挑むので無理もない(高い所に立つと無条件にテンションが上がるらしい)(そして見張り台からの野太い声はその外見からは思いもしないので、日の浅いクルーは必ず二度見することになる)。
キャットと入れ違うようにサッチがやってきた。
「どもー。邪魔しにきましたぁ」
こういうときでもないと華部屋の中を覗ける機会はない。
「っち、お呼びじゃねぇよい」
「うわっ。マルコ、いま舌打ちしたな?……」
壁の警告文に絶句しているサッチの後ろからオレンジのテンガローハットが現れる。
「おうおう、だいぶできてんな。甲板に運ばれてたベッドってチビの?」
「ああ、もう届いたか」
エースも警告文に気づいて固まっている。
「……なぁ、やっぱマルコの部屋においてもらったほうがいいんじゃねぇか、チビ」
黙々と床を拭いているのそばにエースはしゃがみこんで顔を覗き込む。は派手に肩をビクつかせ雑巾を握りしめた。気を張ってるくせに無防備に背中をさらしたりしてバランスが悪い。
「い、いや、それは申し訳ないです。お互い気遣いますし……」
「もしやマルコが毎晩激しくて眠れないとか?」
リーゼントを整えながらにウィンクを飛ばしてサッチが言う。俺はほぼ無意識にサッチの脇腹を殴るがすんでのところで避けられた。
「ジョークだよっ」
「マルコはテクニシャンっていうからな」
サッチの太腿を蹴った。軽くだ。
「いてっ。今のはエースだぞ!」