第7章 華部屋(はなべや)へ (2)
は男物の服ばかり着るが一応、女だ。そのうえ男嫌いだ。男部屋に入れるわけにはいかない。だが一人部屋を与えるわけにもいかない。なぜならはオヤジに特別扱いされているからだ。オヤジに提言する気はないが、これ以上を特別待遇すれば他のクルーに示しがつかない。
白ひげ海賊団はエースおよびスペース海賊団さえ『家族』にしてしまった。オヤジの意向とはいえ、それを受け入れられる土壌がクルーたちにあるのだ。なので異世界からの少女のような女を一人くらい迎えることなんざそう難しいことではないだろう。
しかし、エースのときと状況は違う。は弱い。腕力においても、知識においても。今後もしに対して妬みや恨みを抱く奴が現れたとき、『同室』の『一番隊隊長』の俺が仲裁に入ったのでは、クルーの妬みや恨みを助長させる可能性がある。離れたほうが動きやすいこともある。だから、は華部屋に入れる。女部屋はいっぱいなのだからこれがベストな選択だ。
華部屋の奴らは案の定快諾してくれた。「見てればわかる。あたしたちの仲間ね」と気さくだ。
部屋の四人中二人は十六番隊でいまは留守だから電伝虫で事情を説明する。相変わらず耳が痛くなるほどのハイテンションだ。「あたいらはもちろん大歓迎だけど、一応イゾウ姐さんにも聞いてみるわね」とくる。ここまでは想定内だ。問題はイゾウがどう出るか。だがここでイゾウが拒否したところで俺は引かないつもりだった。イゾウは自分の個室があるのだし、華部屋には自室に納まりきらなくなった和箪笥を置いているだけだ。
イゾウは思いのほかあっさりと承諾したが、条件を付けてきた。のエリアを家具で囲って分けること。部屋の二か所の入り口は四人用と用と分けること。
ったくどんだけ華部屋の連中を囲いたがるんだ。
は華部屋の扉の前で立ち尽くしている。『華部屋』の表札の下に物々しい字でこう書かれている。
『野郎どもの入室を禁ず。オヤジとイゾウ姐さんは歓迎❤』
だから俺も入ったことはない。部屋の寸法は他と同じだからわかるが、よほど汚いのかどんな家具の配置なのかは知らない。扉を開けて真正面の壁にやたら達筆な字ででかでかと警告文があった。