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【ONE PIECE】 さよなら世界

第7章 華部屋(はなべや)へ (2)


【♂】

「マルコ、あれはなにかの罰則か」
 テンポラ島に入ったその晩、雑務をこなし、数人の隊員と街で呑んで帰ってくれば、食堂から出てきたビスタと鉢合わせた。ビスタは「ちょうどいい」と頷き、食堂の奥の一角を示して問う。が一心不乱にグラスを磨いていた。
「さあねぇ」
 ビスタとて答えは知っているはずだ。
「エースのときに比べればずいぶん早くいったと思ったが、あの『鉄壁』は手強そうだな」
 にやりと口髭を撫で、俺の肩をひとつ叩いて去っていく。
 『鉄壁』か。
 なるほど。たしかには「近寄るな、話しかけるな」の拒絶の空気を纏っている。
 でも俺からしたらそんなのずっとだ。一人でグラスを磨いているいまのは見事に『鉄壁発動中』だったが、それでもは少しずつ船に馴染もうとしている。ナースたちと女部屋で女子会をしてからはだいぶ打ち解けていった。食事の前後の手伝いもしている。俺は働けとは一言も言ってないが、なりにこの船での居場所を作ろうとしているのだろう。
 はよく笑っている。というか口角を上げている。自ら上裸になったときも不敵に笑ってみせた奴だ。しかしその目はすこしも笑ってなどいない。『鉄壁』は崩れない。むしろその薄っぺらい笑顔を強固な鉄にしてなおさら寄せつけないようにしているようにみえる。
 しかしクルーにとっては仏頂面をされているよりは人当たりがいいせいか、わりとを警戒していた奴らも仕事をするようになってからは受け入れるようになってきた。

 テンポラ島で食料調達をする必要があった。雪の海峡の番狂わせがあったからだ。ついでにの日常品も揃えるべきだろう。ベッドも買った。こんな小さなベッドにあいつは収まってしまうのかと愕然としたのは俺だけじゃないはずだ。

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