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【ONE PIECE】 さよなら世界

第5章 2月30日の来訪者 (5)


 片膝をついて名前を呼んでも反応しなかったが、俺の指先がの肩に触れるやいなやは飛び起きた。俺に振りかぶってきたの右手を掴む。の手に握られているのは俺のペーパーナイフ。目が合う。は俺が誰だか一瞬わからないようだった。刹那、俺を認識して腕から力が抜けるかと思えば、俺に腕を掴まれていると知って抵抗を始める。なんだか俺たちはこんなことばかりしている気がする。は頭が飛んでいきそうな勢いで首を横に振っている。その目は暗い穴のようで、再び俺が誰でここがどこなのか遮断されているようだった。にはなにかトラウマがあるのかもしれない。
「落ち着けよい」
 放して、と言われたので、ペーパーナイフは取り上げて腕を放す。
 騒ぎを聞きつけたのか、エースがやってきた。俺の持っているペーパーナイフに鋭い視線を送る。
「なんだよそれ」
 なにか誤解されているようだ。
「の武器だよい。回収したとこだ」
「は? え、これってあれだろ。封筒とか開けるときに使うやつだろ? ………っぶ、ぷぷ」
 エースは笑い転げた。やべっ俺ちょっとみんなに言ってこよ、と駆けていく。反対には三角座りで身を縮める。ビスタほどの使い手だったらペーパーナイフも武器になろうが、それでもこの船は四皇の白ひげ海賊団だ。戦闘能力の低い隊員にすらは敵うはずがない。
「武器、じゃなくて、お守り……」
「…………」
 俺は立ち上がった。心臓を鷲掴みにされたみたいだった。なんだ、いまの。は俺を見上げ、といってもその視線は俺の鎖骨あたりで留まり、問う。
「どうしてマルコさんがここに?」
「こっちのセリフだ」
 ため息がこぼれる。いや、そうして心拍数を落ち着けている。
「……ここがいちばん安全な場所かと……」
 それでオヤジの部屋の前ってわけか。『お守り』握りしめて。
「なにをいまさら」
「だって、今夜はサーシャと……マルコさんとサーシャは……その……だから私、いちゃいけない…思って……」
「つまり俺とサーシャがそういう関係だと?」
 こくりと頷く。いったいの頭はどうなってんだ。異世界の奴らってのはみんなこうもバカなのか。なにをどう見てそう決めつけた?
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