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【ONE PIECE】 さよなら世界

第4章 2月30日の来訪者 (4)


「よしっ、食堂まで競争な。三十秒のハンデはつけてやる」
 意味がわからない。ついていけてない私をよそにエースは勝手にカウントダウンを始めた。
「え、競争っていわれても……」
「だから、先に食堂着いたほうの勝ち。25、24、23、22、21、ほら、いいのかよ」
 なにがなんだかさっぱりだったが、このエースから早く離れたほうがいいと私の本能のようなものが指令を出し始めていた。
 船内に入り、階段を駆け降りたあたりで、もうエースは階段を降り始めるところだった。ってかなんで私、エースに追われなきゃいけないの?! 廊下にいた人たちはこういうことに慣れているのか何事もないように道を空けてくれる。いや、そんな普通にしないでよ。

 呼吸が、まだ、整わない。途中で「そっちじゃねぇ」とエースに服を掴まれて、マルコさんのお洋服が伸びてしまわないように必死にエースに着いていって駆けた。勝負じゃないじゃん。船内だから全力疾走ではないにせよ運動と無縁の私にとってはいささかきつい。食堂に駆けこんだ時、ちょうど別の出入り口からマルコとサーシャが出ていく後ろ姿が見えた。エースはもう私の存在を忘れたかのように、まるで三日ぶりにご飯にありつけた人という勢いで食べている。私は性懲りもなくでももしかしたらとの思いで目玉焼きを食べてみる。これは卵です。ディス・イズ・アン・エッグ。目を閉じて集中して。
 ああ、やはり……味がしなかった。何を食べても、だ。

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