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【ONE PIECE】 さよなら世界

第4章 2月30日の来訪者 (4)


 ごった返す食堂にはいたくなくて甲板へ出てみる。曇り空。蒸し暑い。上を見上げればあれは見張り台というのだろうか。めっちゃ高い。どうやって上り下りするのだろう。上で急にトイレに行きたくなったらどうするんだろう。人が上から降りてくるところを見てみたくて、木箱を背もたれにして座り込む。マルコの服が汚れてしまうだろうかと一瞬考えたが、みんな甲板に座ったり寝転んだりしていたので気にしないことにした。たしかエースと名乗ったオレンジ帽子の人は今日も上裸で昼寝している。変態だ。
 船内への出入り口付近で声がした。ここは死角だ。
「マルコ隊長、嬢ちゃんをお探しですかい?」
「いや、べつに用はねぇんだが、見かけたら気ぃ付けてやってくれ。海に落ちたがるかもしんねぇからよい」
 私は反射的に木箱に隠れるように身を小さくしていた。ふとサーシャの声がマルコを呼んだ。
「ちょうどよかった。お昼ご一緒させていただいていいかしら」
「ああ」
「ふふふ。ねぇ。今夜は……どう?」
 二人は船内に入っていったのか、マルコの返事までは聞こえなかった。が。ああ、そうか。そういうことだったのか。マルコとサーシャはできてたのか。なるほどね。ちょっと待て。私、邪魔じゃない? 私、マルコの部屋で寝てるとか、ありえなくなくない? 言ってくれればいいのに! ってか彼女いるのに自分のベッド使わせるか普通? え、この世界の恋愛観ってだいぶ違うの? そこもズレてるの? ああ、サーシャの「いいじゃない、ここ(マルコの部屋)」は最大の皮肉だったってこと? あの時なんかアイコンタクトもしてたしなー。
「あんたさ、困ってんだろ」
 顔を上げれば、昼寝していたエースが片肘をついて起きていた。慌てて目を逸らす。ギリシャ彫刻ですか。
「オヤジに『娘になれ』とか言われて」
 そうだ。根本的な問題はそこだった。 
「あんた船降りても行くとこないんだろうし、だったら肚くくっちまったほうがいいと思うぜ」
「私は……もとの世界に帰るんです」
「どうやって?」
「…………」
 黙りこくる私を見下ろして「ふーん」と勝手に相槌を打ち、腹減ったなとつぶやきながら首をポキポキ鳴らしたりして立ち上がる。
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