第5章 当たり前
由鶴「 でしたら、子は独香様でしょうか? 」
「 え? 」
由鶴「 こうやって話したり、笑い合う姫様は初めてです。
まるで、家族と話しているようで……ふふっ、忘れて下さい 」
口元を隠して笑う由鶴。その笑顔にはどこか見覚えがあった
( …そうだと良い なんて言えないな、)
女中「 由鶴さん、いらっしゃいませんかー?? 」
由鶴「 おや、仕事でしょうか? 」
「 探してるみたいですね、付き合ってもらってすみません 」
由鶴「 こちらこそ。姫様の良い話し相手になれたのなら嬉しい限りです 」
「 またお話聞いても良いですか? 」
由鶴「 もちろん。約束です 」
キュッと小指を握り合う
やっぱり、暖かい。
では と言って仕事へ戻っていくのを見届け、部屋へと戻る
( ……ここは私のいた時代よりも昔。
もし、前世があるのなら…? 探したら居るかもしれない
会いたかった人に。お母さんに。 )
でも、相手は私のことを知らない
たとえ会えても疑われて追い出されるだけ。
( ……結局、会えない )
はぁ と息をつく
本来の目的は忘れていない。
天国にいる母親に会うために、人生を投げた
あの人から逃げるために命を捨てた
生きている意味を成していなかったから
でも、ここに来て全てが変わった
周りに必ず誰かが居てくれて、笑ってくれる人がいて
心配してくれて、暖かい。
暖かい と何度も思う
その分、頭痛がする度に不安になる
切り離されたような感覚、
自分が変わっていくことを否定するようで。
( …私は変わって良いのかな
既に、ここで頑張ってる。人生をやり直してる )
それが正しい選択なのか、ずっと分からないまま
「 …だめ 」
一人になると、どうしても暗くなってしまう
頭を冷やそう。一度気持ちを切り替えよう
そう思い、廊下へ出る
その時―