第5章 当たり前
ひょこっと部屋を覗くと、映るのは一人の女性
「 由鶴さんっ 」
声をかけるとサッと振り返る
由鶴「 独香様、どうぞこちらに 」
由鶴はここの女中を長く務めている
その分、ここの人のことを良く知っていることから色々話すようになった
隣まで行きちょこんと座る
由鶴「 今日は何のお話を致しましょうか? 」
「 武将の人たちの話、また聞きたいです 」
由鶴「 おや、またですか? 」
「 どのお話も好きですけど…皆のことを知りたいです。
そしたら、もっと役に立てるかな…って 」
政宗がお酒に酔った話や
秀吉さんのモテモテな話とかたくさん聞いて
どんどん皆のイメージが変わっていった
その中でも、個性の話は興味があった
由鶴「 でしたら…先ほど聞いたお話をしましょうか 」
「 さっき聞いた話、ですか? 」
由鶴「 えぇ。城下へ買い物をした時のことです
食事をしていた女性の方々がおっしゃっていたのですが… 」
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女性1「 安土は本当に平和よねー 」
2「 えぇ! 信長様や他の武将の方々は頭が上がらないわ 」
1「 あんなに戦にも勝つなんて、生まれてくる前は何をしていたのかしら 」
2「 きっとあのように武士をしてらしたのでは? 」
1「 確かにね。全国統一も頑張ってほしいわ 」
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「 …生まれてくる前? 」
由鶴「 私もここに来た時は考えたことがあったものです 」
( 前世、ってことかな。考えたこと無かった )
「 由鶴さんは自分の生まれてくる前って何だと思いますか? 」
由鶴「 私がですか?……自分のことは考えていませんでした 」
「 …きっと、素敵なお母さんだったと思います 」
由鶴さんの雰囲気は一言で言うなら、お母さんのよう。
しっかりしていて、暖かくて。どこか安心する。