第5章 当たり前
家康「 ちょっといい 」
「 うん 」
襖を開けて、近くまで来る
「 お、お仕事?? 」
家康「 違う。…前、今度手足の傷見せてって言ったでしょ 」
「 あ 」
そういえば。と思い出す
「 湯浴みとかに見てるけどもう無いよ…? 」
家康「 自分の目で確認しないと意味ないから 」
「 そ、そうだね。…どう、かな? 」
ペラっとめくり、確認してもらう
言った通り傷は綺麗さっぱり消えていた
家康「 …うん。もう良いよ。ちゃんと消えてる…
少しだけ栄養もついてる 」
細すぎると政宗と言っていたが、食事を必ずさせてたからか
細すぎるから少し細いにはなっていた
「 太った…? 」
家康「 むしろもう少し太ってほしいかな 」
「 そんなに細いかな 」
家康「 政宗さんの食事、ちゃんと栄養管理されてるから
ある程度栄養がついたら大丈夫だよ 」
( お城で動くだけで充分運動になってるからなぁ )
家康「 …頭痛は 」
「 今日は少しだけ、かな 」
ここに来た時から起こっていた謎の頭痛は
記憶が消えてからも度々起こっていた
動けない とまではいかないが霞むように声が聞こえることもある
そのせいか女中たちに心配をかけてしまうことも度々あった
そんなとき信長が「 そういう体質がある。酷いときには家康か俺を呼べ 」と
言い渡し、騒動になることは無くなった
それでも解決方法がないからか、家康は会う度に聞いてくる
家康「 周期があるのかと思ったけど不定期に起こるから
ちゃんと周りの人に言うことを忘れないでね 」
「 うん。…あの、女中さんたちと話してきても良いかな? 」
家康「 女中たちと? 」
少しずつ話せるようになったせいか女の子同士の会話が最近の楽しみに。
約束をしてお茶会のようなものもこっそりするようになっていた
家康「 あんたの自由。面倒は起こさないでよ 」
「 うんっ。…あの、お仕事頑張ってね 」
部屋を出て行く独香を見届ける
家康「 …そういう一言が 」
クシャと自分の髪を掻きつつも、口元は緩む
( …今、一人で良かった )