第5章 当たり前
着替えを待っておこうと思っていたが
独香は着物をじっと見つめて悩んでいた
それはもう、見てとれるぐらい
( 家康の言っていた痣も見れるかもしれんな。)
ポンと思いつき、提案すれば
「 い、いやいや! そ、それは、あの 」と口をパクパクさせて
真っ赤になる独香
しかし そのまま出るか と言えば渋々受け入れ、後ろを向いた
( 良く顔に出る奴だ ) そう思いながら羽織に手をかける
スラッとした背中には、小さな跡があった
それは傷というよりも殴られたような跡
背中だけではない。それは家康の言っていた手足にも。
「 ……… 」
知らぬ存ぜぬで着せていくが、まさか と考えがよぎる
仮にそうだとして理由は?
理由もなしに? まさかな
そうこうしていると着付けは終わっていた
「 …戻るぞ 」
手を引いて部屋へ戻る