第5章 当たり前
そう考えながら そろそろ良いだろう と
躊躇なく独香の元へ行く
「 湯加減はどうだ 」と聞けば
場に流されるように答える
違和感を持って振り向き
驚きが隠せない顔
まぁ、そうなるだろうな と思いつつ近づく
独香は固まっていた
その震えた姿に伸ばした手が一瞬止まる
( …本能的に拒んでいるのか。ここなら多少震えは止まるだろう )
そう思い頭にポンと置く
濡れた髪が揺れる
ポタポタと毛先から水が落ちる
震えが収まってきたのを感じ、首元を見る
赤い跡はうっすらと見えるだけになっていて
ひとまず肩の荷が下りた
大丈夫か と態度で示すように撫でながら目を瞑る
( どう動いたら良いか分からんのだろう? どう答えたら良いか
こんな場面にあったことなどお前はないだろう )
きっと人に見られることにも
何をしてても良いと言われることにも
縛られた日々を、お前は送っていたのではないか。
それが性格となっているのではないのか。
声に出さず、頭の中で呟く
( 自由を教えてやりたい )
そんな思いが生まれる
独香の当たり前を自分の手で変えてやりたい
そう思うとここから早く連れ出したかった
「 疲れはもうとれたか 」
「 え、あ…はい。大体、は…?! 」
はい と言葉を聞けば、羽織をかけて抱き上げた
「 貴様を一人にすることを俺が拒んでいる 」
そう言えば首を傾げる
一人になるな と言えば一瞬ピクッと体が動いた