第5章 当たり前
「 俺が見てこよう。首の跡も気になっていたからな 」
分かりました と返事をし、去っていく家康を横目に
独香のいる場所へ向かう
( 傷の他に打撲など、か。彼奴が素直に見せるかはわからんが
見て取れる範囲で確認するか )
扉を開けると、そこにあるのは代えの着物
その上には独香が教えてくれたぺんだんとという物と耳飾り
奥の浴場からは誰かのお湯に入る音が聞こえた
( …独香か )
誰の音か など、考えなくても分かる
少し待つか とぺんだんとに触れる
( 先ほどはあまりじっくりと見れなかったからな )
開けば、さっきも見たように女の人が目に入る
( やはり、母親なのだな )
どことなく、似ている
しかし何度も握られたのか、型は少しズレていて留め具のような部分は
ボロボロになっていた
( よほどこのぺんだんとに縋っていたのか
こんなになるまで縋る理由があったのだろう
無理にでも聞いておくべきだったな )