第5章 当たり前
「 な、なん…え、え? 」
慌てふためく独香を見て笑う
信長「 フッ…ククッ何を驚いている
貴様との約束まで待ちきれなかったから迎えに来ただけだ 」
「 で、でも入ってくること… 」
言う間もなく近づいてくる
( む、無理無理無理…!! こわ、)
「 っ― 」
ギュッと目を瞑る
胸元を手ぬぐいで隠して少し震えた
しかし、手が当てられたのは頭
( ……? )
恐る恐る目を開くと、優しい眼差しで独香の頭を撫でていた
「 あ、あの… 」
信長「 大分落ち着いたようだな、跡も消えてきているか。」
安心するかのように目を閉じる信長を見て
独香はどう反応すれば良いかわからず、固まっていた
( ど、どうすれば…?? 心配して、くれてるんだよね。
嬉しいけど、これは…どうしたら良いのかな… )
とりあえず眺めていると、
「 疲れはもうとれたか 」 と目を閉じたまま聞かれる
「 え、あ…はい。大体、は…?! 」
気付いたときには信長の腕の中
羽織で隠され、横抱きにされていた
「 あ、あの!? どうし… 」
信長「 貴様を一人にすることを俺が拒んでいる 」
「 …? 」
信長「 一人になるな。今は誰かと共にいろ 」
囁くように言い聞かせてくる
独香は はい としか頷けなかった
( 一人に… )
チクリと心に刺さる言葉
何かを破られそうな気がした
羽織を着せられたまま、着物を渡される
「 着たら出てこい 」と言われるが
もちろん、着物はこっちに来てからしか着たことがない
着付けも覚えてないため、着れるとは思えない
持ったまま固まっていると、それに気付いたのか
信長「 …着方を知らんのか 」
「 …すみません 」
信長「 後ろを向いておけ 」
「 え? 」
着せてやろう と含み笑いで言われる
「 い、いやいや! そ、それは、あの 」
信長「 ならばそのまま出るか 」
「 ………… 」
扉を開ければ冷たい冬の風が吹いている
こんな状態で出れば風邪を引くことは確実
観念したのか、後ろを向く独香
それを見て羽織に手をかける信長
動くなよ と声がかかる