第5章 当たり前
( また、夢? 起きなくちゃ、さっきの言葉どういう… )
目を覚ますと、そこは先程までいた安土ではなかった
「 …? ここ、」
暗い、暗いその中から声が聞こえる
か細く、小さな声
〔 ねぇ もう少しだけもう少しだけ…
我儘をね、聞いてほしい
愛していると その声を
どうか私にも 聞かせてほしい 〕
( この歌は… )
どこか、懐かしいと感じる歌
その声の方へ歩く
だんだん光が見える
ふと走ってしまう
( 人影、)
小さな人影
それはこちらを振り向くと歌うのをやめ
言葉を放つ
〔 あなたはずっと逃げる いつまでも いつまでも
会うためと言って 私たちから逃げる
あの場所に依存して 私たちを捨てていく
そんなの 許さない
忘れるなんて 許さない 〕
「 忘れ…? 待って、あなたは… 」
影で見えないまま私に言う
〔 許さない 〕
「 っ―!! 」
影が増えていく
〔 捨てないで 〕〔 ここへ来て 〕〔 逃げないで 〕
〔 置いていかないで 〕〔 忘れないで 〕
いかないで いかないで いかないで
いかないで いかないで…
「 いた、い…! 」
許さない
「 やめて…やめて! 」
恨んでやる
「「「 うあ”ぁ”ぁ”ぁぁぁぁ!! 」」」
「 っはぁ、はぁ……こわい、怖いっ 」
何も見たく、ない
逃げるように毛布へ包まる
小刻みに震えていることが自分でも分かる
〔 逃げる 〕
「 逃げてなんか、ない…こんな、の嫌、だ 」
自然と首元に手が重なる
息が苦しい
呼吸が、辛い
でも
「 死にた、く… な、い 」
「 独香!! 」
そこに、皆の声が聞こえた―