第5章 当たり前
それは、私が軍議という名の昼餉から抜けて
部屋へ向かいながら城の中を見ていたときから―
独香「 やっぱり広い、よね… 部屋覚えれるかな 」
家臣「 独香様!これからどこへ? 」
( 見たことない人? 家臣さんかな? )
独香「 あ、いえ…少し見てて 」
家臣「 そうでしたか。…ここは本当に良いところですよ 」
昼の空に語るように言う家臣を見て
独香「 ここの人たちは、どんな人なんです、か? 」
家臣「 御館様たちのことですか? そうですね…
私は政宗様にこの身を捧げてますが、政宗様だけでなく
信長様、秀吉様…皆さん私たちのことを第一に考えてくれます。
要望にもすぐに対応して下さって、身分による差別も嫌うのです 」
( 差別を嫌って… )
独香「 身分による差別を…? 」
家臣「 えぇ、すごい方々ばかりですよ 」
独香「 ここに居れて…良かったですか? 」
家臣「 もちろんです。安土のために命をかけることが
自分自身、誇らしいと感じるくらいに 」
( 命をかけても誇らしいって言える場所… )
独香「 …すごいです。あ、えっと名前… 」
与次郎「 与次郎とお呼びください 」
独香「 与次郎さん、私もここに居たいって思えるでしょうか 」
与次郎「 きっと思えますよ。独香様の笑顔は素晴らしいと
政宗様がおっしゃっていましたし、皆さんあなたのことが
気になっているようにみえます 」
独香「 そんな、こと 」
与次郎「 ふふ、お邪魔してしまいすみません。失礼しますね 」
独香「 は、はい 」
門の方へと歩いていく与次郎を見届ける
( 私にも、いつか思えるのかな。元の時代に帰るよりも
この場所にいたい って、
死ぬよりも、ここで生きてみたいって― )
「 おかあさん… 」
ポツリと呟いて、部屋へと戻る