第5章 当たり前
「 独香!! 」
襖を開けると、そこに居たのは毛布に包まって震える独香だった
政宗「 どうした独香、何があった? 」
家康「 …そんなに腕に食い込ませてたら血が出るよ
落ち着いて、こっち向いt 」
パンッ―
家康「 !? 独香…? 」
家康の手は弾かれる
それは、独香の意志によって。
見上げると、その瞳に光はなく
その代わりにあったのは
確かな、拒絶の色―
信長「 独香 」
一歩近づく。すると
独香「 来ないで!! 」
いつものおどけた言葉遣いとは違う
力強い言葉
聞いたことのない
聞くはずの無かったその声に一同は唖然とする
ハッとするように秀吉が声をかける
秀吉「 落ち着け。俺たちは何もしない。
ほら、息吸ってみろ 」
光成「 そうですよ。私たちをちゃんと見て下さい。
皆さん、あなたのことが心配なんです 」
震える手に自分の手を重ねて落ち着かせる光成
その手は小さく、冷たかった
( ずっとこの城に居たはずなのに、ここまで冷たく… )
はぁ、はぁ と肩で息をする独香の呼吸が落ち着きを取り戻してくる
力が緩んだことにより毛布が落ちる
そこから見える首元には、掴んだような赤い跡
光秀「 家康 」
家康「 …分かってます 」
家康はその場を離れ、何かを取りに向かった
信長「 少しづつで良い。何があったか話せるか 」
そう言いながら髪にそっと触れる
リン と鳴る耳飾り
その音は今だけ、悲しみの音に聞こえた
光成「 この跡は誰かに? 」
フルフルと首を振る
秀吉「 じゃあ自分でしたのか? 」
コクリと頷き、深呼吸を繰り返す独香
信長「 …侵入された跡もない。何か見たのか? 」
キュッと重ねられた手を握ると
少しづつ話し始める
独香「 あの、ね… 」