第4章 寝顔【牛島若利】[生誕記念]
若利と出逢ったのは小学校3年生の頃。
クラス替えで偶然一緒になったのだ。
ひっこみじあんの定型文だった私は、若利とは一切話さずに狭い世界で暮らしていた。
眼鏡にポニーテール、隅っこでずーっと本を読んでいるような子だった。
ある日の放課後、本を借りたあと教室に戻ると、若利が私の席で寝ていた。
なんの接点も会話したことがなかった私は、数分立ち尽くしていた。
『...あの、』
ちょっと大きめの声でそう言うと、若利が目を覚ました。
「あぁ、悪いな。...寝てしまっていたようだ」
そう言った若利は退く気が無いように見えた。
『あの...本、おきたいんですけど...』
「...あぁ、」
若利はそう呟いたあと、私の眼鏡をスルッとはずした。
「...お前、どうして眼鏡をしている?」
突然の事で訳もわからず立ち尽くす私に、若利はそう問いかけた。
『...えっ?』
「どうしてそのような綺麗な顔をしているのに眼鏡などつけるのだ、と聞いている。」
『...それは...っ、』
なんの冗談、と言おうとしたけど、そのまっすぐな瞳に捕らえられて動けなくなった。
若利の目は、私なんかよりまっすぐで、きれいで、自信に満ち溢れていた。
それは、今も同じ。