第5章 肝試し【国見英】
『んっ、あ...やっぁ...ん、あきら...!』
何度も唇を重ねる。
ブルブルと震える手で口を必死に押さえて声を隠す。
「なぁなぁ金田一、折り返し地点どこだ?」
「...しっ、知らないッスよ!」
何でこんなときに限って...。
それでも英は動きを止めない。
『っ、ん...あっ...んんんっ!』
私は絶頂を迎える。
ゴム越しに暖かい感覚があるから、きっと英もイったハズ...。
「矢巾先輩...! 今なんか...。」
「お前ビビりすぎ。」
口を押さえていたけど、声はバッチリ聞こえていたみたいで、
金田一は周囲を警戒するようにぶんぶんと懐中電灯を振っている。
『あきっ...』
「金田一~。」
そのとき、英が金田一を呼んだ。
「国見?」
ザッザッと足音が近づく。
もう駄目だ...。
「折り返し地点はあと200mだぞー、ガンバレー。」
「お、おう...。」
英の言葉を聞いて、だんだんと遠くなる足音に安堵の息をもらす。
『英!? ば、ばれたらどーするつもりだったの!?』
「まぁ金田一だしいいかなと思って...痛って! 叩くなよ...。」
『も、もう!英なんて知らない!』
そういって英から離れようと体を押す。
その時、松川さんから【もう戻ってきていいぞー】とラインが入る。
戻ってから金田一に「お疲れ。」と言われたのはここだけの話。
fin.