第11章 流されてしまいそう
目が大きく見開かれ、彼の拳が強く握られているのを見ながら、
ナナシは「言うか迷ったのだ」と正直に告げる。
「本当は・・・エルヴィンに見つからないように預けている
『心臓』を持ち去ろうとも考えたのだ。こんな私がいては
何かと心が落ち着かないと思って・・・。だが、リヴァイに
見つかってこの古城に連れて来られて、エレンと会った時
迷っていた心に決心がついた。
少しの間でも、お主の役に立ちたいと・・・・
そう思って・・・。迷惑かもしれないが・・・・」
言い終わる前に、エルヴィンに抱き竦められナナシは言葉が
続けられなかった。
「迷惑なんかじゃない!君が少しでも傍にいてくれる方が
良いに決っているだろうっ!?君はいつも一人で何かを
抱え込んでしまうから心配だ。正直に話してくれて、
本当にありがとう・・・」
「エルヴィン・・・・」
強く抱き締められて少し苦しいけど、
今はそれが心地良かった。
エルヴィンが全身でその想いを告げてくれているような
気がするから・・・。
僅かに震えるエルヴィンの背中にそっと手を回して
抱き締め返すと、彼の腕に一層力が籠もった。
ミケではないが、スンと鼻を鳴らしてエルヴィンの匂いを嗅ぐと、
懐かしい匂いが鼻腔を擽り心が落ち着く。
待ち焦がれていたエルヴィンの感触、エルヴィンの匂い、
エルヴィンの存在・・・
変態で、時に幼児退行するどうしようもない男だけれど、
やはり好きだな~と思ってしまう。