第9章 悪夢と決意
「明日エレンの巨人化実験があるなら黙っている事は
不利益に繋がると思うから言うが、以前私は相手と同調し
操る能力があったと言ったよな?」
「あぁ。命を削り過ぎてもう使えないと言っていたやつか」
「一年半前一度死んで、新しい身体となった事によって、
私は今その能力が使えるようになっているのだ」
「・・・っ!?」
リヴァイは一瞬息を呑み、ナナシの肩を掴んで迫った。
「何だとっ!?それは本当かっ!?」
もしも、それが本当なら巨人化したエレンが万が一暴走した場合、
抑え込むのが容易くなる。
エルヴィンもハンジも喉から手が出る程欲しがっていた力だ。
「嘘を言ってどうする。・・・というか、リヴァイ、
肩と背中が痛いのだが・・・」
「あぁ・・・悪ぃ」
ナナシは石壁に背中を押し付けられる形となっていて
非難の声を上げると、すぐにリヴァイは罰が悪そうに手を離した。
彼の事だからうっかり力が入り過ぎてしまっただけだろうが、
普通の人間が人類最強の力で壁に押し付けられては
骨に罅が入るだろう・・・多分。
「じゃあ、明日の実験でその力を使うのか?」
「場合によっては・・・。エレンの能力制御次第だな。
実験で兵士を危険に晒すわけにはいくまい」
「そうか・・・。おまえがいてくれると何かと心強い」
能力のある無しに関わらずな。
そう言ってふっと微笑んだリヴァイは、やはり優しい男だと思う。
釣られてナナシも笑っていると、何故かゆっくり
リヴァイの顔が近づいてきた。
ナナシの唇にリヴァイの唇が触れるか触れないかの距離に
近づいた時、リヴァイの頭が何者かに鷲掴みにされ
その身体が勢い良く吹っ飛ばされた。