第9章 悪夢と決意
「立ち聞きとは行儀が悪いな、リヴァイ」
「生憎と地下街育ちでお行儀なんざ良かった試しはねぇ」
表情一つ変えない男に「相変わらずだな」と思いながら、
自室へ向かうと自然と二人で並んで歩く形となった。
「俺は優しくなんかない。あのガキに愚痴を零されても
どうすれば良いかわからねぇし、気の利いたジョークも言えねぇぞ」
「何も言わなくても良いのだ。ただ、耳を傾けてくれていれば、
それで良い。それにお主は優しいよ。一年半経ってもそれは
変わらぬ。さっきだってエレンが魘されているのを知っていたから
心配して見に来たのであろう?」
「・・・・・・・ちっ」
目を逸らして舌打ちするリヴァイに、
ナナシが「照れておるのか?」と茶化すと頭に拳骨を貰い、
痛みで呻く羽目になった。
「うぅ・・・痛い。本気で殴りおって・・・」
「本気な訳ねぇだろ。つーか、一年半で弱くなったんじゃねぇか?」
「・・・・・・」
「おい、黙るな。そうなのか?」
「いや、強くなったか弱くなったかで言えば、前者だろうな・・・」
リヴァイが足を止めて、ナナシを凝視し
「それは本当か?」と真剣に尋ねてきたので、
「本当は誤解を生まないようにエルヴィンと会ってから
話そうと思っていたのだが・・・・」と前置きを置く。