第9章 悪夢と決意
「エレン・・・力を持つ者、人と違う者は皆、孤独を背負っている。
リヴァイもそうだ。『人類最強』という一見輝かしい称号を
持っているが、それ故孤独でお主の気持ちを一番理解しているのは
彼だと思う。いつも不機嫌そうにしてて恐く感じるかもしれんが、
優しい男だ。苦しい時はリヴァイを頼れ。私がいる時は
私でも良い。何の力にもなれないかもしれないが、
愚痴くらいなら聞ける」
「でも・・・迷惑じゃ・・・」
「人間は一人では生きていけぬ。誰かと支えあってしか
生きていけないのだから、お互い様というやつだ。
子供が変な遠慮をするな」
「・・・・・・」
黙り込んだエレンを不思議に思い覗き込むと、
彼は涙を拭い真っ直ぐナナシを見つめて言った。
「さっき・・・ナナシさんが俺の事を
『ただの人間の子供だ』って言ってくれて凄く嬉しかった。
子供扱いは嬉しくないですけど、久し振りに人間扱いして
もらえたような気がして・・・・救われたんです」
はにかみながら言ったエレンにナナシは微笑を返し、
「本当に事を言ったまでだ」と言うと、彼は目を伏せた。
「明日の実験で巨人になった俺を見ても、そう言ってもらいたいです」
また不安そうな色を浮かべたエレンに、
ナナシは「成程」と納得する。
折角人間扱いをしてもらえたのに巨人になった瞬間、
敵意を向けられるのではないかと恐れているのだ。
ナナシは何でも無い事のように言い放った。
「安心しろ。先程も言ったが私も普通ではない。
下手をすればお主より化物だ。たかが巨人になれるお主を
恐れる事は無い」
「え?もしかしてナナシさんも巨人化能力をっ!?」
「・・・いや、残念ながら巨人化は出来ぬ」
「そう・・・ですか」
しょんぼりしてしまったエレンの頭に手を置いたナナシは、
「だが・・・」と言葉を紡ぐ。