第9章 悪夢と決意
そっと眠っているエレンに近づき、
ベッドに腰掛けて頭を撫でてやると、
苦しそうだった彼の息遣いが少し和らぎ
「・・・母さん」と言って目を覚ます。
悪夢に魘されるくらいなら、さっさと起こしてやった方がいい。
質の悪い睡眠は心身共に良くないから・・・。
エレンはナナシを視認すると、眠そうに数回瞬きをしたが、
我に返ったのか顔を真っ赤に染め勢い良く飛び起きた。
「な、な、な、ナナシ・・・さんっ!?どうして、ここにっ!?」
ナナシは慌てるエレンの頭をポンポンと撫でると
「魘されてたから」と端的に答える。
それを聞いたエレンは罰が悪そうに視線を落とし、
「もう大丈夫です」と強がっていたが、
ナナシがじっと見つめていると根負けしたように
「嫌な夢を見て・・・」と話し始めた。
「巨人になった俺が・・・母さんを食べる夢を見て・・・。
俺の身体のはずなのに全然言う事きかなくて、
終いには兵長や皆に化物として殺されるんです。
俺どうしたら良いかわからなくて・・・っ!
ハンジ分隊長は『わからない事があれば、わかればいい』って
言うけど、本当にわかる日が来るのか不安で・・・っ!!」
堰を切ったように言葉を紡ぐエレンの目は不安に揺れ、
涙が溢れていた。
グスグスと泣き始めたエレンを慰めるように背中を撫で、
ナナシは彼が落ち着くまで根気強く接する。