第8章 ナナシの『伝説』
「この中でそのエロ本を読んだ奴・・・手を挙げろ」
震える声でナナシが言うと、明らかにリヴァイ班四人は
挙動不審になり、わたわたとし始める。
だが、誰一人として手を挙げないのでナナシは地を這うような声で、
この場にいる全員に告げた。
「もしも読んだ事がある癖にこの場で手を挙げなかった奴が
いた場合、全身の関節を外して死ぬ一歩手前まで殴り続けるぞ」
「すみませんでしたっ!!」
「許してくだ・・ガフッ!」
「それだけはご勘弁をっ!!」
「確かに読みましたが素晴らしい官能小説でしたっ!!」
エルド、オルオ、グンタ、ペトラは手を挙げた瞬間、
そう叫んでスライディング土下座をした。
ナナシは半目になって四人を見回した後、
正座しているハンジに問い掛ける。
「なぁ・・・調査兵団皆殺しと、エルヴィン・スミス及び
ハンジ・ゾエを殺すの、どちらが良いと思う?」
「やめて!その二択!!選択肢その三の『笑って許す』で
勘弁して下さい!あたしは、不本意ながら協力しただけで、
悪いのはエルヴィンなんだから!」
「そうか、エルヴィンなら殺して良いと?」
「だから、誰も殺さないでっ!」
「ならば、代替案を用意しろ。お主の助かる道はそれだけだ」
「・・・・うぅ・・・」
自分の命が掛かっているため、ハンジはその優秀な頭脳を
総動員させ必死に考えを巡らせる。
リヴァイは静観しているだけで助けてくれる様子が微塵も無いし、
リヴァイ班の四人はハンジと同じく罪悪感から正座をしているが
口を挟める状態でもないので黙り込んだままだ。
縁の下の力持ち的存在のモブリットは本部に置いてきてしまったので、
実質今ハンジの味方はいないと言える。
散々目を泳がせたハンジは、人間性を捨てる決意をした。