第8章 ナナシの『伝説』
ハンジ曰く・・・
ナナシを失ってからエルヴィンが何かを書き始めたと思ったら、
ナナシに纏わる逸話を書いていたらしく、
ある日突然ハンジの所に来て
「これを本にしたいんだが・・・」と言ってきたらしい。
最初はハンジも面倒臭かったので協力を断ったが、
研究予算をくれるというのでそれに応じ、
無事本が出版されたという・・・。
「ほほう?何を勝手に人の事を本にしてくれているのだ?
誰が許した?私は許してないぞ」
「いや、だってさ~。傷心のエルヴィンの心を癒やすためには
必要だったというか・・・・、それにナナシはもういなかったし」
床に正座し、目を泳がせながらハンジが言い訳をしていると、
騒音を聞きつけたリヴァイが「何があった?」と食堂に現れた。
ハンジ(とリヴァイ班)は、リヴァイの姿を認めると縋るように
「リヴァイ~!」「兵長~!」と助けを求める。
粉々になったテーブルと、床に正座させられているハンジを見て、
「またハンジが妙な事をしたのか」と思ったリヴァイは、
ハンジを見捨てて踵を返そうとしたが、
ナナシから声を掛けられたのでその場に留まる事になった。
「リヴァイ。お主はエルヴィンとハンジが出版した
私に纏わる本の存在を知っておるか?」
「あ?」
突然振られた話題に、リヴァイは数回瞬きをしてから
漸く「あぁ、アレの事か」と肯定を返した。