第8章 ナナシの『伝説』
ナナシは、エレンそっちのけで走り出した。
明日エレンの実験の為ハンジは古城にいるので、
食堂でリヴァイ班と話している彼女の下に向かうと、
何事かと全員の視線がナナシに集中する。
ナナシの醸し出している尋常ではない殺気に全員の顔が引き攣った。
「ナ、ナナシ?・・・どうしたの?」
元凶の一人であるハンジがそう声を掛けてきたので、
ナナシは醸し出す殺気はそのままで綺麗な微笑を浮かべた。
「ハンジ、今エレンから聞いたのだが・・・
何か変な本をエルヴィンと作ったらしいではないか?
是非私にも読ませて貰いたいな」
その言葉にハンジだけではなくリヴァイ班全員が
ビクリと身体を揺らし、視線を逸らす。
その反応からここにいる全員がその存在を知っているのだと察した。
「何の事かな~?あたしには全然身に覚えがないけど~」
わざとらしく口笛を吹くハンジにイラッときたナナシは、
彼女達が使っている木製のテーブルを拳で粉砕した。
物凄い音と共に砕け散ったテーブルに身を竦ませ
顔面を蒼白にした五人は、震えながらナナシを見遣る。
「そうか、そうか。ならば、思い出すまで少し痛い思いを
してもらおうか。あぁ、だが加減を間違えて骨を
粉砕してしまったら、すまない。私は今とても
気が立っているので、力の加減が上手く出来るか自信が無いんだ」
「すみませんでしたーーーーーっ!!!」
ハンジが絶叫しながら土下座してきたので、
ナナシは満足そうに頷き詳細を聞くことにした。