第8章 ナナシの『伝説』
ナナシとしては調査兵団の為に力を貸す事自体
嫌という訳ではないが、壁外調査にも行けない奴に
あれこれ指導されるのは、新兵やナナシを知らない兵士にとって
どうなのだろうかと思ってしまう。
壁外調査から無事に戻って初めて一人前と認められるという
風習がある調査兵団において、ナナシは明らかに異端である。
確かにナナシも調査兵団所属時に壁外調査に二度行ったことはあるが、
一年半前の話だ。
ナナシがいない間に入った兵士の中にはナナシに
反感を持つ者も出てくるだろう。
それを考えると頭が痛い。
また暴行や強姦紛いの事をされそうで・・・・。
「エレン・・・そういう指導はリヴァイに・・・」
そう言うとエレンは叱られた犬のような表情をして
「そうですよね」と肩を落とした。
「団長やリヴァイ兵長を指導するような凄い人に、
俺のような新兵が見て貰えるはず無いのに身の程を弁えず、
無理言ってすみませんでした」
シュンとしてしまったエレンに罪悪感が込み上げる。
「・・・・エレン、私はもう壁外調査に行けないんだ。
そんな奴から指導を受けるなんて嫌だろう?」
「いえっ!そんな事ありませんっ!」
顔を上げたエレンが縋るように食いついてきた。