第7章 『制約』
ナナシはすぐに死んでしまう。
だからエルヴィンに会う事も、調査兵団に戻る事も渋った。
こうやってハンジのように悲しんでくれる人間が少なからず
いてくれるから、心の負担になりたくなかった。
・・・特に以前ナナシの『最期』を看取ったエルヴィンには、
二度も同じ想いをさせたくなかった。
「置いていかれるばかりの私だったが・・・置いていく事が
あんなにも辛いものだったとは思わなかった。
本当はもう二度と味わうのも味あわせるのも御免だったが、
仕方無い・・・」
悲しそうに微笑んだナナシを見て、リヴァイ達は
グッと奥歯を噛み締めた。
問答無用で連れてきて、エルヴィンに報告してしまったが、
この選択は間違いだったのだろうか?
そう考えたが、すぐ「否」と改める。
リヴァイは荷物を漁り、エルヴィンから託されたものを
ナナシに渡した。
渡されたものを見て、ナナシは目を見開いて驚く。
「・・・これ・・・」
「エルヴィンが・・・おまえにマントを完成させて欲しいと言って、
俺に渡してきた」
リヴァイが渡したのは、いつもエルヴィンの執務机に飾られていた
犬のぬいぐるみだった。
元はエルヴィンがナナシに買い与えたものだったらしいが、
狙撃事件以降ずっとエルヴィンが所持していたものだ。
ナナシがいなくなってから、エルヴィンが時折愛おしいものを
見るようにこのぬいぐるみを見つめていた事を
リヴァイは知っていたが、その仔細は知らない。