第6章 人の子
「これはあくまで憶測だが、エレンの巨人化能力はある程度
その精神状態に左右されるのではないかと思う。
力が暴走するのは大抵己の精神が未熟だった場合が多い。
私も大概普通では無いから、自分の経験則で物を言うぞ。
要は、力に精神が支配され振り回されるか、暴れる力を
自分の精神力で抑え込めるかどうかの話だ。
エレンは見た限り前者だろうな。その暴走を少しでも抑えるには
日頃の環境も重要だと思う。たまには息抜きがてら
104期生だっけ?エレンの友達に会わせてやるとか、
そういうフォローは入れるべきだ。でないと、最悪の結果にも
繋がりかねん」
ナナシが言い終わると、食堂内がシーンと静まり返った。
皆硬い表情で何かを考えるように虚空を見つめていたりしていて、
ナナシは余計な事を言ってしまったかと後悔する。
だが、折角、巨人化能力を持つエレンがいるのならば
その力を最大限開花させるべきだし、制御も出来るように
させるべきだ。
それには環境を整え、精神状態を良好に保つのが最善だと考える。
「・・・何か、何も知らぬ癖に余計な事を言ってすまない」
重い空気に耐えかねてナナシがそう声を上げると、
ハンジは真剣な表情のまま首を横に振った。
「ううん、ありがとう。一理あると思う。あたし達は
巨人化能力をどうにか出来ないかという事ばかり考えてて、
エレン自身の事は見て見ぬ振りをしていたかもしれない」
ハンジの言葉に賛同するようにリヴァイ班の四人は頷いたが、
リヴァイは厳しい表情でナナシを見据えた。