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夢追い人の君へ捧げる【進撃の巨人 エルヴィン】

第6章 人の子







「ハンジの言う通り、おまえの言う事にも一理ある。
・・・が、今そんな甘いこと言ってられる程状況は芳しく無い。
エレンの身柄を引き取る際、審議所で啖呵を切っちまったからな。
今度の壁外調査で何らかの成果を上げなきゃならねぇ。
その為には死に物狂いで巨人化能力をマスターさせる必要がある」


暗い表情をする幹部組を見て、相当切羽詰まった状況なのは
察せられる。

ナナシの言ったことは甘っちょろい理想論だ。
そんな事は自分がよくわかっている。


・・・・だが。


「絶望が人を強くさせる場合もある。エレンもいずれ
その道を歩む事になるかもしれんが、今はこのぬるま湯のような
環境で強くしてやりたい。それでダメなら、それこそお主の言う
『死に物狂いの環境』を与えてやれば良いさ」

「ほう?それはおまえがエレンを指導してくれるって事か?」


リヴァイの質問にナナシは言葉に詰まった。

それは自分がまた『教官』として調査兵団に在籍するという事だ。

残念ながらナナシは様々な『制約』を『妖連盟』から
課せられている為、安易には頷けない。



答えに窮していると、強い視線を感じてそちらを見遣れば、
エレンが訴えかけるようにナナシを見つめていた。


「俺は・・・強くなりたい、です。それが天敵たりえる力なら尚更、
・・・俺は負けたくないっ!」


エレンの叫びにも似た訴えに、ナナシの心は揺さぶられる。

こんな・・・たった15年くらいしか生きていないような子供が、
そこまで追い詰められているなんて、この世界は残酷過ぎる。



「・・・・すまんが、少し考えさせてくれ。私にも色々と事情がある」


今はそう答えるだけで精一杯だった。

エレンは落胆したような表情をしたが、リヴァイ達幹部組は
ナナシの言った『事情』という言葉に何かを察したらしく
「わかった」とそれを了承し、リヴァイ班の四人は
『もしかしてナナシさんの身体は良くなってないじゃ・・・』と
心配した。





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