第6章 人の子
相変わらずの二人にナナシは苦笑し
「で?二人共メシは食ったのか?」と尋ねると、
元気良く「食べてませーん!だからナナシの御飯食べさせて!」と
挙手して強請った。
想定内の事だったので、ナナシが用意しようと席を立とうとしたが、
ペトラとオルオが「自分達が用意してきます」と言って
厨房まで行ってくれた。
ハンジとミケが同じテーブルに着き、リヴァイに
「で?話したの?」とハンジが尋ねると、彼は
「おまえらが来てから話そうと思っていた」と告げ、
エレンを見た後、真っ直ぐナナシを見据えてきた。
「ナナシ、食事中だが話したい事がある」
「先程も言っていたな?何だ?言ってみろ」
その瞬間、和やかだった空気が張り詰めたものとなり、
ナナシはこれから話される内容が余程重大なものなのだと
再認識する。
「超大型巨人やトロスト区の件はエルドから聞いたな?
破壊された開閉扉をどうやって塞いだか、おまえも疑問に
思ったかもしれねぇが、そこにいるエレンがそれをやってのけた」
「・・・エレンが?」
ナナシは緊張気味に固まっているエレンを横目で見ながら、
リヴァイに話の続きを促すと、とんでもない事実を打ち明けた。
「―――エレンには、巨人化能力がある。そして巨人になって
空いていた穴を埋めた」
リヴァイの一言でエレンもリヴァイ班もハンジ達も
やや緊張した面持ちになったが、ナナシは違った。
「へぇ~・・・それは凄い」
まるで事の重大さを理解していないような反応の薄い声に、
リヴァイは額に手を当てる。
「おい、事の重大さがわかってんのか?」
「わかっておる。エレンは巨人になれるんだろう?
凄い事じゃないか」
「その割には随分と反応が薄いじゃねぇか。普通はもっと
驚くもんだろ」
「驚いたに決まっているだろう?だが、私としては
そういう反応しか出来なかっただけだ。悪気はない」
皆の期待するような反応が返せなくて申し訳ないと言うナナシに
リヴァイは眉を寄せ、詰問するように言った。