第33章 夫婦というもの
「ずっと、こうしていたいな・・・」
ポツリと漏れたエルヴィンの言葉は本音なのだろう。
彼だって好き好んで戦いに身を置いている訳ではなく、
平和な世界に生まれていたなら、こうして誰かに甘え、
穏やかな時を過ごせたのかもしれない。
誰かと世帯を持って、子供が出来て、妻子と笑いながら
暮らす未来も・・・。
ナナシはエルヴィンにそういう幸せを掴んで欲しいと願っていた。
・・・それが、自分がいない来世でも。
腰にしがみついているエルヴィンの顔を上げさせると、
その額にそっと唇を落とした。
リヴァイやエルドにやった『おまじない』だ。
きっと来世では幸せになってくれるだろう。
キョトンと見上げてくるエルヴィンの顔が子供のようで
思わず笑ってしまうと、彼は少し拗ねた顔をして
「口にはしてくれないのか?」と強請ってきた。
「今のはお主が幸せになれますようにという『おまじない』
だからな。口では意味がな・・・」
言い終わる前にエルヴィンがナナシの唇にキスをする。
チュッというリップ音の後、エルヴィンはウィンクして
「これは俺からのおまじないだよ」と笑った。