第33章 夫婦というもの
諭すように優しい声でそれを語るナナシを想い、
エルヴィンは漸くナナシの顔を真正面から見つめた。
きっとナナシも色々葛藤し、自分の事を考えてくれていたのだろう・・・。
会ってからナナシは自分を心配はしたが、責めるような素振りは
一切見られなかった。
「私は、お主と夫婦でいる事を決め、眷属を見捨てた。
それは他の誰でもない私が決めた事だ。だから、この件に関して
お主が責任を感じる必要もないし、負い目に感じる事もない」
「しかし・・・っ!!」
エルヴィンは口を挟もうとしたが、ナナシが手を翳し
「最後まで黙って聞いてくれ」と目配せしてきたので、
押し黙る。
「・・・だが、どうしてもその責任を負いたいというなら、
私と共に罪を償ってもらいたい」
それを聞いた瞬間、エルヴィンは目を見開きナナシの顔を見つめた。
ナナシは穏やかな笑みを浮かべてエルヴィンを見つめていて、
それが彼が自分で出してくれた答えなのだと気づき、
目頭が熱くなる。
「君と一緒に罪を背負っていきたい・・・。俺はどうすれば良い?」