第33章 夫婦というもの
「リヴァイと・・・寝たのか・・・?」
「寝た」
迷いもなく即答された答えに、エルヴィンは怒りよりも
哀しみが湧いてきて、思わず手で目を覆う。
「・・・そ、それは男女の関係か?」
「あぁ。そっちの『寝た』だ」
信じたくはなかったが、現実にその事実を突き付けられると
鋼の精神を持つエルヴィンでも相当きついものがあった。
あまりのショックで言葉が出ず、暫くの間沈黙が部屋を
支配していたが、ナナシからまた話を切り出された。
「私は・・・人間ではないから『夫婦』というものは
よくわからない・・・。だが、多分これが夫婦の有り様なのでは
ないのかという考えは昔からあった。夫婦になれば互いを
尊重し合い、労り、支え合うものなのだろう、と。一方が
全てを背負うのではなく、分かち合うものなのではないだろうか」
静かに・・・穏やかな声で紡がれる言葉にエルヴィンは
黙ってそれに耳を傾ける。
「私達は全てにおいて自分だけで抱え込もうと意固地に
なっていたのではないだろうか。『きっとこうした方が
相手の為だ』という考えを盲信して、結局は相手の考えなど
聞かず、自分の考えだけで行動していたのではないだろうか。
そんな事をやっていたら、衝突してしまうのも当たり前だ。
意見も碌に聞かないから互いのズレが大きくなり、
取り返しのつかない事態にまで発展してしまうのではないだろうか」