第33章 夫婦というもの
大人しく椅子に座っていると、ティーポットとカップを持った
ナナシが戻ってきて、カップに注いだお茶をエルヴィンに
渡してきた。
カップを受け取ると、ふわりと漂ってきた匂いからいつもの
あの花茶だとわかり、エルヴィンの頬が自然と緩む。
疲労回復に良いとされるお茶を出される度に、ナナシに
気遣ってもらっていると思えて、とても嬉しく感じるのだ。
一口飲むと、口の中に華やかな香りと甘い味が広がり、
幾分エルヴィンの不安を和らげた。
「・・・それで?今日は何しに来た?」
唐突に切り出された話にエルヴィンは身体を強張らせ、
ナナシから視線を逸らす。
今までどんな状況でも他人の目を見られない事など無かったのに、
この時ばかりは恐くてナナシの顔を見られなかった。
だが、このまま黙っていても何も解決しないと考え、
重い口を開く。
「・・・わからない。気づいたら、ここに来ていた」
「そうか・・・」
「あぁ・・・・」
らしくなく馬鹿正直に言ってしまった事を後悔しつつ、
エルヴィンの頭の中はグルグルと思考が絡まって考えが
纏まらなかったが、一つだけどうしても確かめたい事があり、
思い切って尋ねた。