第30章 ●復讐
「無駄だ。この件に関してお主はリヴァイに手出しは出来ぬぞ」
「それは・・・どういう意味だ?」
「私とお主は婚姻という契約によって結ばれている状態だ。
よって私と同じようにお主も今制約を受けている。お主は
私に念書を書いただろう?あれによって、お主は私と
その協力者に復讐などの事は出来ない」
数日前書いた念書の存在を思い出したエルヴィンは絶句し、
内容を詳細に思い出した。
『エルヴィン・スミスはナナシの復讐を素直に受け入れ、
どんな罰も受ける。それに関しての怨嗟でナナシ及び
その協力者達への危害も加えないと誓う』
そんな内容の念書を自ら書いてナナシに渡したのは事実で、
エルヴィンは血の気が引いた。
「安心しろ。これは私に対してのみ発動する制約だ。
調査兵団団長としてなら、そんな制約など受けぬから
今まで通り、上ともやりあっていけるぞ?」
「・・・・・だが、頼むから・・・それだけはやめてくれ
・・・・。私が悪かったから・・・・」
情けない声が出てしまったが、それでも懇願せずにはいられない程
エルヴィンには苦痛だった。
長年恋焦がれてやっと手に入れた存在が、他人の手に
触れられるなど考えるだけで気がおかしくなりそうだ。
父親の夢を立証する事以外で執着したのはナナシだけで、
エルヴィン個人にとってはナナシが全てと言っても良い。
しかも、自分のベッドでやられてしまったら、もう二度と
ここで眠れる気がしなかった。